心療内科医のひとりごと

専門用語を使わない心療内科のはなし


抜き捨てることが出来なかった、名も知らぬ花

携帯が起床時間を告げると、愛犬がベッドに飛び乗り早く起きろと催促する。
その前からこちらの雰囲気をうかがい、早く起こしたくてウズウズしているのを知り、知らぬ顔で寝ているのだから、こちらも少し意地が悪い。

まずは、朝食。夕食ではなにか “おかず” をいただけることも多いのだが、朝食はドッグフードだけ、少し気の毒になるようなドッグフード単味を、驚くような速さで平らげてしまう。そう、かれはまだ青年なのである。

平日朝のお散歩コースは決まっている。ほぼ20分、毎日通るコースなのに、何がそんなに気になるのか、かれは毎朝、何とも真剣に匂いを嗅ぎまわり、いかにも重大事というように、丁寧にマーキングをする。
環境汚染に成らぬよう、丁寧な回収作業をしております。

コースの途中に、綺麗な土手をつくりその上に趣味の良い柵を設けている、会社が在る。
誰でも知っている大会社、土手一つをとっても会社の品格があり、すっきりとした芝生が土手を覆っている。
ご近所の犬たちはこの芝生が大好きで、当然、マーキングの必須箇所となり、犬と犬とのマーキング合戦が毎日、飽くことなく繰り返されている。
互いの眼が逢ったと言って、ワンワン怒鳴り合いをしたり、犬どもがすっかり野生にもどってしまう場所である。

毎年、春になると、綺麗に芝が刈り込まれて新緑が何とも気持ちよいのだが、多くの野草がどこからともなく飛んできて、勝手に根をおろし、自生してしまう。
愛犬が、毎朝お世話になる場所であることと、雑草の下品な自己主張が嫌いで、目につく雑草は引き抜き、芝生の景観を保つお手伝いをしていました。

ところが、ある朝のこと、本当に控えめで細く頼りない雑草が背を伸ばし、その先端に、直径は1mmにも満たず、長さも2cm在るかないかのごく薄いピンクの花を咲かせたのでした。
風が吹けば、直ぐにも飛ばされそうで、雑草の持つ猛々しさなどどこにも在りません。
その儚げな姿に打たれました、この草はどうしても引き抜くことが出来ません、それどころか毎朝挨拶をし、元気な姿を応援したいような気分、強い雨が降った翌朝には心配でした。

その花が、先週末で散りました、細い雑草が重い責任を果たしたように、しかし、どこか寂しくなったように佇んでいます。
何かの旅立ちを見送ったようで、安堵と喪失の混ざり合った、不思議な気分です。

愛犬はそんなことに構いもせず、今朝も、おしりをフリフリ先を歩いて行きました。



About Me

こんにちは、腎臓・血圧内科を専門として医師の仕事を始めました。腎臓がとても悪くなると血液透析をしないと、生きていけません。血液透析とは機械を使って1回に3から4時間、週に3回から4回、血液をきれいにする治療です。これが始まると殆どすべての患者さんが、うつ病のような状態になられます。患者さんの心に触れないといけないと思い、精神科の勉強も始めました。心療内科・内科を開業して13年目になります。難しい専門用語をできるだけ使わずに、心療内科のお話をして行きたいと思います。

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