公務員の父が酔っ払い運転のトラックに撥ねられ、瀕死の重傷で入院。
乳離れをしたばかりの私は、母が父を看病していた半年あまり、叔母に育てられました。
「お父さんが元気になって、ようやく引き取ったのに、夜中に目が覚めるとおばちゃんを探して、泣くんだもの、お母さん本当に悲しかった」
何度か聞いた母の述懐です。
大学生になった後までも、昼寝から覚めて周囲に人が居ないと、軽いパニックになりました、特に夏にこの症状が強かったので、母に尋ねると、預けられたのが夏であったそうです。
ここからは想像ですが、昼寝から覚めたら母が居らず、突然知らない世界に置き去られた幼い私は、耐え難い不安に巻き込まれたのでしょう。
それが、長い間私の中に残っていたのだと思います。
小さい頃から、「子供のくせにどうしてそんなに周囲の人に気を遣うの?」と言われたものです、これも、突然知らない世界に置き去られた幼児の、生存への懸命な努力から生じた性癖だと考えると理解できます。
医学を学び、幼い自分に起こったことを知り、それを分析することでどうにかこのトラウマに打ち勝つことが出来ました。
しかし、この叔母には、他の叔母には全く感じない、母に感じるのと同じような思いをずっと抱いていました。
生まれたばかりの赤ん坊は目の焦点調節が出来ません、ただ一つ良く見える距離は “明視の距離”、そうです赤ちゃんの目に、生まれて初めてはっきり見えるのは、自分を抱いている母親の顔なのです。
お彼岸の墓参り、両親の笑顔と幼い頃に手を引いてくれた母親の手の温もりを思い出しました。
難しい理屈はいりません、お子さんを可愛がって育ててあげて下さい。
