心療内科医のひとりごと

専門用語を使わない心療内科のはなし


加齢とうつ病-歳をとるという事

紹介で、ある美人女優さんが来院されました、元気がなく、しょんぼりされていますが、それでも眩しいような美人です。
「どうされました、何か嫌なことでも在ったのですか?」
ポロポロと涙をこぼされながら、私の質問に答えられました。
「朝起きて鏡に向かったら、眼尻にしわのあることに気が付きました。お化粧の乗りも悪くて、もーだめだ、お婆さんになってしまったと思ったら、何もしたくなくなりました。小さい頃から、綺麗だね可愛いねと言われて女優になり、一生懸命頑張って来ました。肌に悪い事はしないように、日焼けには何時も注意していました。太ったらいけないから、何時でも少しだけ食べて、空腹も我慢して来ました。でもお婆さんになった私には何の価値もないのです」
泣き顔すらも美しく、本当の美人とはこういうものかと感じ入った次第です。

誰だって歳をとります、可憐な娘役から成長して、素敵な大人の女性を演じるようになり、やがて人妻役、でも何時かはお婆ちゃんを演じることになりますね。
若さは確かに魅力ですが、大人の魅力、良い事も悪い事も全部受け止めて微笑んでいる老人の魅力はまた別のものですよね。

素人の私が言うのも何ですが、演技力を磨いてもっと深みのある芝居が出来るようになったらどうでしょう、外面だけではなく内面を磨く努力もされてみてはどうでしょう?
軽い抗うつ剤と睡眠導入剤をお出しして、経過観察としました。

2週間が経過して、彼女が再度外来に見えました、何とま~美しかったこと、表情がキラキラ輝いています、まさにオーラ全開です。彼女の周囲にだけ別な空気が存在するかのようで、正面に座っていると息苦しさを感じました。

あれから、尊敬する女優さんたちが出ている沢山のDVDを見ました、先生の言われる通りだと思いました。
若さや生まれながらの美しさもありますけれど、確かに年齢を重ねた重みや、演技力からくる魅力というのがあることがわかりました。
私は自分に甘えていたような気がします、頑張ってもう一段上の女優を目指します。
その後の笑顔の凄かったこと、傾城・傾国の美女、古い言葉を思い出しました。

誰でも歳を取ります、それに従って出来なかったことが出来るようになり、逆に出来たことが出来なくなります。
新しいことを身に着けることがだんだん難しくなります、一方で物の見方や考え方が深く多面的になります。
集団に危機が迫った時には、必ず経験を積んだ年配者の意見が求められるではありませんか。

子供の頃には、何曜日の何時には何チャンネルで何の漫画を見るか、努力もぜずに覚えていました。
相互に脈絡がない新しい事柄でも、どんどん記憶できました。
しかし、大人になったらそうは行きません、「何が何して何とやら……」、論理的な流れを作り、そこに当てはめていかないと物事は覚えられません。

若い時には流動的知性が盛んで、歳を取ると結晶的知性が充実してくると言われます。
また、身体的な能力が加齢によって落ちるのは誰でも知っており、誰にでも起こることですが、適当な運動と食事内容で良い状態を保つことは可能です。

出来なくなったことを嘆く必要はありません、誰だってそうなのです。
でも、大人になった今だからこそ、人生経験を積んできたからこそ解る人生の味もあることを再認識しましょう。

人生は筋書きのないドラマ、素敵な老け役を目指して頑張りましょう!

さて、厳しい残暑のなか、今日はどこで昼食をとろうかな?



About Me

こんにちは、腎臓・血圧内科を専門として医師の仕事を始めました。腎臓がとても悪くなると血液透析をしないと、生きていけません。血液透析とは機械を使って1回に3から4時間、週に3回から4回、血液をきれいにする治療です。これが始まると殆どすべての患者さんが、うつ病のような状態になられます。患者さんの心に触れないといけないと思い、精神科の勉強も始めました。心療内科・内科を開業して13年目になります。難しい専門用語をできるだけ使わずに、心療内科のお話をして行きたいと思います。

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